風俗営業関係
■風俗営業とは
風俗営業とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)で定められた5つの営業形態を指します。これらは善良の風俗と清浄な風俗環境、及び少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのあるものとして営業時間や営業区域などの規制を受けます。風俗営業を行うに当たっては、警察の許可が必要となります。
風営法で定められた5つの風俗営業形態は以下の通りです。
①1号営業
キャバレー、ショーパブ、クラブ、キャバクラ、ホストクラブ、スナック、ラウンジなど、客の接待をして遊興または飲食をさせる店。
②2号営業
低照飲食店(店内の照度が10ルクス以下の飲食店)。同伴喫茶、カップル喫茶など。
③3号営業
区画席飲食店(他から見通すことが困難で、5平方メートル以下の客席を設けた飲食店)。個室居酒屋など。
④4号営業
マージャン店、パチンコ店、パチスロ店
⑤5号営業
ゲームセンター、スロットマシン、テレビゲーム機を設置した施設
※深夜(午前0時〜午前6時まで)は営業できません。ただし、一部の地域(例えばススキノ地域など)では、条例により深夜1時まで営業が認められている場合があります。
※一般的に「風俗店」と呼ばれる、いわゆるエッチ系のお店は、法律上は「性風俗関連特殊営業」(後述)に分類され、風営法上の「風俗営業」とは異なります。
■風俗営業における「接待」とは
「接待」とは、歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことです。つまり、客に対して、普通の飲食行為に伴う役務以上に会話やサービスをすることです。
風俗営業における「接待」の具体例として、以下のようなものがあります。
① 談笑・お酌
・ 特定少数の客の近くにはべって継続して談笑の相手となる
・ お酒などの飲食物を継続的に提供する
・客の隣に座って会話をする
② カラオケ関連
・客とのカラオケのデュエット
・客の歌唱後に「うまい」「良かった」などと褒めはやす
③ ゲーム・遊戯
・客と一緒にダーツ、トランプ、オセロ、テレビゲームなどを楽しむ
④ ダンス・ショー
・ 飲食物の提供をしながら、特定少数の客にダンスやショー、生演奏を見せる
⑤ スキンシップ
・客との身体的な接触
⑥ その他のサービス
・コスプレした店員のチェキ撮影
・煙草に火をつける
これらの行為は、単なる飲食の提供を超えて、客が期待して来店するような積極的なサービス提供と見なされます。ただし、カウンター越しの短い会話や、飲食物を提供した後すぐにその場を立ち去る程度の行為は接待には該当しません。
■風俗営業許可の要件
1.風営法の許可における人的欠格事項
① 成年被後見人、被保佐人、または未復権の破産者
② 重大な犯罪歴がある者
・1年以上の懲役または禁錮刑を受け、その執行終了から5年を経過していない者
・特定の罪(わいせつ、賭博、人身売買、売春関連、児童買春等)で1年未満の懲役または罰金刑を受け、5年を経過していない者
③ 暴力的不法行為を行うおそれがあると認められる者
④ アルコール、麻薬、大麻、あへん、または覚せい剤の中毒者
⑤ 過去5年以内に風俗営業の許可を取り消された者、または取り消し処分の聴聞中に営業を廃止した者
⑥ 未成年者(ただし、相続人で法定代理人が欠格事由に該当しない場合を除く)
これらの欠格事由に該当する場合、風俗営業の許可は下りません。申請前に自身が該当しないか確認することが重要です。
2.建物設備等の基準
営業する店舗は以下の条件を満たす必要があります。
①客室の床面積が、洋風の場合16.5m²以上、和風の場合9.5m²以上(1室のみの場合を除く)。→1号営業の基準
②客室の内部が外部から見えにくいこと→1号、2号、3号営業の基準
③客室内に見通しを妨げるものを設置しないこと→3号営業以外の基準
④店舗内の照度が5ルクス以上であること→1号、2号営業の基準
⑤店舗内の照度が10ルクス以上であること→3号、4号、5号営業の基準
⑥騒音や振動が条例の基準以下であること→1号、2号、3号、4号、5号営業の基準
⑦客室の床面積が1室5㎡以上(客に遊興させる態様の営業は1室33㎡以上)であること→2号営業の基準
⑧善良の風俗または清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を設けないこと→1号、2号、3号、4号、5号営業の基準
⑨客室の出入口に施錠の設備を設けないこと(店舗外へ直接通じる出入口を除く)→1号、2号、3号、4号、5号営業の基準
3.営業場所の選定基準
風営法の許可が必要な営業場所の選定基準は、主に以下の2つの要素から構成されています。
① 用途地域規制
風俗営業が可能な地域は限定されています。
・営業可能:近隣商業地域、商業地域、準工業地域、工業地域、工業専用地域
・営業不可:住居地域、住居専用地域
② 保全対象施設からの距離制限
保全対象施設から一定の距離はなれている必要があります。
・距離制限は営業所の用途地域によって異なる(例:商業地域では学校から50m以上離れている必要がある)
これらの基準を満たす場所を選定することが、風営法の許可を得るための重要な要素となります。
営業場所を決定する前に、必ず用途地域と周辺の保全対象施設の有無を確認することが大切です。
風営法の許可が必要な営業場所の選定基準に基づく主な保護対象施設(保全対象施設)は、小学校、中学校、高等学校、大学、図書館、児童福祉施設(保育所、児童館、児童養護施設など)、医療施設(病院(第1種助産施 設を含む)、診療所、第2種助産施設)。
例えば、学校、図書館、児童福祉施設、病院から100メートル以内の地域では営業できません(これらの施設が商業地域または近隣商業地域に設置されている場合は距離制限が異なる)。風俗営業許可の場合、店舗の敷地端から周囲100m以内に保護対象施設(土地だけの場合も含む)がないか注意することが重要です。
※風営法以外の規制による制限もあります
〈建築基準法の制限〉
例:4号営業(マージャン店、パチンコ店、パチスロ店)
風営法上は営業可能となっている用途地域のうち、工業地域では床面積10,000㎡以下の制限、工業専用地域では営業不可(建築不可、居抜き物件でも不可)。商業地域、近隣商業地域、準工業地域は風営法と同じく営業可。
〈条例の制限〉
市町村において条例により風俗営業を制限している自治体がある。
例:札幌市特別用途地区
第一種および第二種職住共存地区ではパチンコ屋などの建築を認めていない。
4.管理者の選任
・店舗ごとに管理者1名を選任する
・管理者が人的欠格事由に該当しないこと(該当すると不許可)
■性風俗関連特殊営業とは
性風俗関連特殊営業とは、「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」(風営法)によって規制される営業形態です。
この営業には、以下の主な種類が含まれます。
これらの営業を行うには、都道府県公安委員会への届出が必要です。
届出を行った店舗は一般に性風俗店または風俗店と呼ばれます。
営業者には従業者の就労資格確認や名簿作成などの義務があり、これらを怠ると罰則の対象となります。
1. 店舗型性風俗特殊営業
風営法第2条第6項第1号〜第6号に規定
・ソープランド〜1号営業
・ファッションヘルス〜2号営業
・ストリップ劇場等〜3号営業
・ラブホテル等〜4号営業
・アダルトショップ等〜5号営業
・出会い系喫茶〜6号営業
2. 無店舗型性風俗特殊営業:
・デリバリーヘルス〜1号営業
・アダルトビデオ等通信販売〜2号営業
3. 映像送信型性風俗特殊営業
・インターネット等を利用したアダルト画像送信営業
4. 電話異性紹介営業
・テレホンクラブ(店舗型)
・ツーショットダイヤル、伝言ダイヤル(無店舗型)
※「届出制」ですが、営業禁止地域が多いので、新規届出は難しいのが現状です。現在営業している店舗も既得権による営業が多いです。
※現在は無店舗型性風俗特殊営業のデリバリーヘルスの届出が多いです。